帰りじたくのお客さんが、突然ステージに招きあげられた

(日経「春秋」2013/5/11付) 文楽をきつねうどんにたとえて、竹本住大夫さんは、人形がお揚げさんで、それを生かす土台が、うどんの大夫とおつゆの三味線。土台のおいしさあっての文楽なのだから、昔は見にいくのではなく聴きにいくといった。舞台を食べものになぞらえる。その伝でいくなら、先日は思わぬデザートを楽しんだ。300人が入る東京・白寿ホールであったバロック音楽のコンサートで、アンコールも終わって帰りじたくのお客さんが、突然ステージに招きあげられたのである。この日のプログラムは「関ケ原の合戦」の時代のイタリア音楽で、使ったチェンバロやオルガン、リコーダーなどは古いものの忠実な複製だという。舞台を埋めた人が工芸品のような楽器を囲み、写真に撮り、演奏者に声をかける。リコーダー奏者の水内謙一さん(37)が間際になって思いつき、楽器のレンタル会社とホールのOKをとったのだそうだ。心が肥えるもう一皿、大歓迎である。
(JN) 何時もと違う工夫を受けるとそれは嬉しい。それは毎回できることではないからであろう。ということはそれを実現するために、多くの方々の協力があったのであろうか。それが素敵なデザートになった。見習いたいこの心意気、これも常に思いを募らせているからであろう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO54884400R10C13A5MM8000/