科学で耳にするもっとも胸躍る言葉は「へんだぞ……」

(日経「春秋」2013/5/8付) SF作家にして生化学者のアイザック・アシモフが言ったそうだ。科学で耳にするもっとも胸躍る言葉、それは「私は発見した!」ではなく「へんだぞ……」である、と。この「へんだぞ」は門外漢の胸まで躍らせる。陸地でしかつくられない花崗(かこう)岩がブラジル沖の大西洋の深海底から大量にみつかった。その不思議が、かつてここに大陸があった証しではないか、その大陸とは長く伝説のなかにのみあり続けたアトランティスでないのかと。豊かで繁栄を極めていたというのに、1万2千年前、一昼夜にして海に沈んでしまった。1万年近くも後になってギリシャ哲学者のプラトンはそう書いた。そんな大陸はなかった、と考える方がいつの世もおそらく多勢であって、今回も人の暮らしや文明の痕跡が姿をあらわしたわけではない。が、深海の底にはないはずの花崗岩があったのだから、やはりへんな話である。不可解の先に何を発見できるのか。
(JN) 疑問から新たな発見や改善がある。日々、時の流れに身を任せて行く方が幸せかもしれないが、やはり刺激は必要だ。偉大なる発見や発明だけでなく、我々の普通の生活でも、「へんだぞ」を大事にしたい。年を取ると「へんだぞ」が面倒になってくるが、否、若者に負けず「へんだぞ」を心掛けるぞ。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO54758660Y3A500C1MM8000/