イボニシという巻き貝が、福島第1原発の周辺で姿を消した

(日経「春秋」2013/3/31付) むかしむかし、体のとても大きな男がおった。丘の上にいながら、海のはまぐりを採ることができたほどじゃった。身を食べた後で捨てた貝殻は積もり積もって山のようになった。そこは大櫛の岡と名づけられたそうな――。「常陸国風土記」が記す巨人伝説の一節だ。大串貝塚ができたのは今から5000年以上も前。稲作が伝わるはるか昔から、この列島の人たちは貝を食べてきた。その大串貝塚から100キロあまり北の海辺で、貝たちに異変が起きている。イボニシという巻き貝が、福島第1原発の周辺で姿を消したそうだ。気になるニュースではある。イボニシの変化により、船の塗料に含まれていた有機スズ化合物のためにメスがオス化するという現象が地球規模で観測され、有機スズ塗料は世界中の船で使用禁止になった。新たな警告をこの小さな生き物が発しているのだろうか。
(JN) 私たちより小型の生き物が私たちより環境に敏感で警告をしてきた。その警告を正しくとらえることで、自分達を守るのであろうが、この世の中、自分たちの生命よりも他に守ろうとする傾向があり、悲しい歴史を繰り返している。私たちが継続的にこの日本で生活して行く上で、選択を間違えないようにしたい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53430310R30C13A3MM8000/