雀の声を聞かない春に改めて思う

(日経「春秋」2013/3/6付) 雀の子、雀の巣、雀隠れ。みな春の季語である。これが寒雀となると冬の季語にかわる。年中目にするありふれた生き物だから、ということになろうか。ところがいつもいたはずのこの鳥は大きく数を減らしてしまったらしい。三上修さんの近著「スズメの謎」によると、過去20年ほどの間に少なくとも半分にまで減ったという。そういえば空き地でさえずりあったり、電線に並んで羽を休めたりする姿を見なくなって久しい。気がついたらいない。春の小川で群れ泳いでいたメダカは絶滅危惧種になっている。ツバメもミツバチもドジョウも、このままでは昔話や童謡の中に封じ込められてしまいそうだ。身近な生き物が姿を消したということは、私たちが育ち、親しんだ思い出の風景も消えてなくなったということである。雀の声を聞かない春に改めて思う。
(JN) 言われてみれば、確かにスズメを見なくなった。カラス、鳩、ムクドリは見かけるが、スズメはどこへ行ってしまったのか。自然は常に環境に応じて変わっていく。この環境は我々人間が住みやすいように変えてきたが、これは本当に住みやすいのであるか。人間の体よりも、経費や効率のためであろう。資本の流通にとって良い環境の中で、やがて人間も消えて絶滅危惧種になるのか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52475390W3A300C1MM8000/