だまされ続ける人の舌の、なんと無力なことか

(日経「春秋」2013/2/16付) 無茶(むちゃ)な飲み食いを牛飲馬食といい、過酷な肉体労働は牛馬の粉骨と呼ぶ。一緒くたにされがちな牛と馬が、肉になって人の口に入るときはえらい違いになる。先月、冷凍ビーフバーガーに馬肉がみつかったとアイルランド政府が発表したのが発端で、波紋は欧州連合(EU)各国、ビーフラザニアなどほかの冷凍食品にも広がった。英語で牛肉はビーフ、豚肉はポーク。しかし馬肉は文字通りホースミートである。こうした言い方は仏語や独語でも同じだ。食用としての馬はどこも牛や豚ほどなじみがない。それをだまされて食卓にのぼらせたと知れば、フォークの手もとまる。古くは中国で「羊頭狗肉(ようとうくにく)」といい、先年は日本でも食肉の偽装があった。肥えたとなんのと威張ってもだまされ続ける人の舌の、なんと無力なことか。
(JN) ミンチになると犬や猫の肉でもわからない。特に、味付けで火を通してしまえば、舌触りも解りゃしない。技術は進歩して人間は退化している。この資本主義の世の中、人をだまして儲ける。騙したことがわからなければ、それで幸せ。現在の先進国における大衆とは無力である。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO51784540W3A210C1MM8000/