敵のスパイクを拾って拾って、粘る

(日経「春秋」2012/11/26付) 「おれについてこい」。1964年の東京五輪で優勝した日本の女子バレーボールチームは、当時の社会にまさしく列島あげての大興奮をもたらしたと記憶する。ソ連を下したその決勝戦の映像全編が、このほど見つかったそうだ。ハイライトしか残っていないとされてきたから注目の発見で、NHKは1時間25分すべてを正月に放送するという。戦後の糸ヘン景気以来、女性があまた働く紡績会社はレクリエーションのバレーに力を入れ、やがて有力な実業団チームも生まれる。日紡に呼ばれた大松監督は選手をスパルタ式に鍛え上げるわけだが、この人は戦争中にインパール作戦に従軍した過酷な体験の持ち主だ。時代というものを思わずにはいられない「東洋の魔女」の物語である。日紡の流れをくむユニチカのチームも消えて久しいが、ニッポンの女子バレーはロンドン五輪での活躍が示すように栄光を取り戻しつつある。敵のスパイクを拾って拾って、粘る。半世紀前の映像には、いまに続く不屈の精神が宿っているに違いない。
(JN) 粘りの力は練習と信頼であったろうか。「俺についてこい」。今では信じられないであろうが、只管、監督に言われた事を行う。信頼と優勝という目標に向かってスパルタ式に鍛え上げた。今の我々には同じことはできないであろうが、まずはこの正月の放送を見て「不屈の精神」の戦いを見て、回転レシーブの真似でもしたい。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO48813940W2A121C1MM8000/