道理なき大学開設不認可は直ちに撤回を

(日経「社説」2012/11/06) 田中真紀子文部科学相が、来春開学予定だった大学3校の設置を不認可とした。不認可になったのは秋田公立美術大、札幌保健医療大、岡崎女子大で、いずれも短大や専門学校を4年制大学に移行するケースだ。田中文科相は「大学が多すぎて教育の質が低下している」「認可の判断を審議会に任せていいのか。審査がルーティンワーク化している」などと批判し、3校の開設について唐突に不認可とした。ほかの政務三役や事務方との調整もなかったという。来春の開学を控えて教員採用や入試の準備など進めていた3校への影響は大きい。短大からの編入を志願し、ほかの進路を考えていなかった学生は途方に暮れているという。大臣の「鶴の一声」が、これほど理不尽な状況を生み出すことを田中氏は想像していなかったのだろうか。不認可は裁量権の逸脱だとして、訴訟を起こされる可能性もある。ここは過ちを潔く認め、不認可の撤回を決断すべきだ。田中氏は外相時代に政治主導をはき違えたような振る舞いが問題になり、今回も言動を不安視する声があった。案の定というべきで、首相の任命責任も重い。
(JN)物事を作り上げていくには時間と労力が長期にわたってかかる。大学の設置も、そのスタートからその時のルールに従い準備を進めてくるのであり、申請する側、審査する側それを取り持つ側など、皆が調整して、作り上げている。現状の問題は大臣の申されているようであろうが、申請手続きについての処理は、原理に従っていない。その方法がまずいならば、まずはそこから切り込んでいくべきであり、最終段階のところを逆転させるのは、後出しジャンケンであろう。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO48107420W2A101C1EA1000/