「アラブの春」後の混乱を放置するな

(日経「社説」2012/10/25付) 独裁者を倒すより、その後の新しい国造りのほうが道は険しい。中東に広がった民主化要求運動、いわゆる「アラブの春」も例外ではない。長期独裁政権が崩壊した国々は今、様々な困難に直面している。国際社会はこれを放置してはならない。速やかに効果的な支援に動くべきである。
 内戦が続くシリアの情勢は深刻だ。死者は3万人を超え、これをくい止めるのが緊急の課題だ。同時に体制転換があった国々を民主化の軌道から外れないように支えることを忘れてはならない。
 リビアやイエメンで深刻な流出武器の回収にも、国際社会は対策を講じるべきではないか。中東ではイスラム教を侮辱した映画をめぐり、反米感情が高まっている。民主化の失速は中東全域を一段と不安定にさせかねない。石油を中東に依存する日本は傍観するわけにはいかない。
(JN) 日本国憲法の前文で、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と述べている。アラブも含めて、世界の国民が皆、生きる最低限の権利を取得できるように何かしら日本国民がしているか。一部の方はここへ乗り込み命を失ってもいる。しかし、私も含めて大方は傍観者だ。できることは何か、小さなことでも試みなければ、「われら」にはなれない。そして、われらの国を代表する方々が、もっと大事なことに時間をかけて行動してもらいたい。もう直ぐ冬が来て、その後には「日本の春」に総選挙がやってくるのか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO47654260V21C12A0EA1000/