キンモクセイ、匂いが記憶を呼び覚ます

(日経「春秋」2012/10/13付)
 今年はまだキンモクセイの香りが漂ってこない――。東京あたりではそんな声をよく聞く。それでもきのう、近所の小学校の裏手を通りかかったら思いがけずその香りに出合った。ああ1年ぶりだ、去年の今ごろは……と忘れていたことを思い出させてくれるキンモクセイである。匂いが記憶を呼び覚ます「プルースト効果」というものだろう。人をそんなふうに切なくさせるこの植物は、気温だけでなく空気の汚れにも敏感らしい。大気汚染が深刻化していた高度成長期には匂わぬキンモクセイが公害の象徴のように言われたそうだ。今年あたりの様子をみても何ともナイーブな花樹だから環境のバロメーターにほかならない。季節がめぐればどこからか甘い香りが漂い、過ぎた日々を思い起こせる幸福をかみしめてもいい。
(JN)確かに金木犀の香りはまだである。何の影響で遅れているのか。それよりも、残念ながら香りから記憶を呼び覚ますことが私にはできない。それは四季を通じで花粉に悩まされるので、クシャミと涙で過去を呼び起こすあり様だ。今どきのクシャミは次年度予算編成、大学祭・・・。そう、大学祭は決まった匂いを出している。あれを嗅ぐとどんなことを呼び起こすのか。いや呼び起こさず転寝が続くのであろうか。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO47206280T11C12A0MM8000/