時間は一つではない 260214

 時を刻むとは何かと『天声人語/260212』は思い▼独立時計師の菊野昌宏さんの仕事場を訪ねた▼「時代が違えば、異なる時間の読み方もあります」。江戸時代には夜明けと日暮れを境に、一日を昼と夜に分け、十二支などで表した▼だから季節によって昼と夜の長さは変化する。それに合わせて、十二支が示す時間の長さも伸びたり、縮んだりする。▼なるほど。変化する自然に向き合う生活には、江戸の時間が合理的なのだろう▼時間は一つではない。そう思うだけで、何だか面白い。はて、もしも時を自由に操れるタイムマシンがあれば、過去と未来、どちらに行くだろう。「過去ですね。江戸の時計師の仕事をみたい」。笑顔で、菊野さんは言った。あなたなら、どうですか。
 時間というものは人類がその生活のご都合でつくりだしたものだ。自然の中でその流れと共に生きることに憧れる。しかし、自分が産まれた時から、常に時間に追われている生活から脱出する勇気はない。労働時間という束縛から逃れ、少々自由にはなったが、相変わらずの分刻みの生活だ。さて、タイムマシンでどこへ行きたいか。過去の偉人と話をしたい。