着膨れラッシュに『天風録251205』は思う▲ダウンジャケットや厚手のコートを着た乗客が一気に増えた。まさに人の壁。「すみません」と声をかけながら、車両の奥に体を押し込む。どっと疲れた▲少しでも、すいた電車に乗れないか―。大正期、統計で一つの解を導き出した物理学者がいた。寺田寅彦だ▲懐中時計を手に東京都内の電車をじっくり観察。何本もやり過ごす中で、混雑には「峰」「谷」があると気付く。平均3、4本ごとに超満員の電車が来て、それに次ぐ2、3本はすいている▲気ぜわしい師走。やり過ごす余裕などないという人に向け、寅彦の随筆から一文を贈る。「一歩おくれてすいた車に乗るほうが、自分のためのみならず人のためにも便利であり『能率』のいい所行である」
それでも目の前の列車に乗ろうと、グイグイと人を押してギュウギュウの人の中に入っていく。別に次の列車に乗っても十分に間に合うのに、先を急ぐのか。なぜ、だろうか。昨日は冷え込み、私の利用する鉄道4本の内の3本が送れていた。着膨れラッシュと遅延の時期、無理せず次の電車を待つ能力を身に着けたい。
