それは花ではなく花を育てる土 241121

 谷川俊太郎さんが残したものに『有明抄(241120佐賀新聞)』は思う◆〈死んだ男の残したものは/ひとりの妻とひとりの子ども/他には何も残さなかった/墓石ひとつ残さなかった〉。〈死んだ兵士の残したものは/こわれた銃とゆがんだ地球/他には何も残せなかった/平和ひとつ残せなかった〉。戦争がやまない「今」を突き刺す叫びのよう◆「平和」という一編に出てくる〈それは花ではなく花を育てる土〉。その土壌づくりに必要な一つが「言葉」と思う◆〈支えられてはじめて気づく/一歩の重み 一歩の喜び/支えてくれる手のぬくみ/独りではないと知る安らぎ〉◆70年以上言葉と向き合い、思いを言語化してきた戦後を代表する詩人が92歳で逝った。残したものは多い。
 (私は)思う。米国の軍事力で平和を維持している日本。この平和は誰を犠牲にして成り立ってきたのか。この平和の土壌づくりはどこで行われているのか。いや、行っていないのか。世界中の人々が互いの平和を支えている。そして、また別のところでは、互いに戦争を行っている。この違いは何なのか。何が残されていくのか。