『まさに炎の衣をまとわされたような気分』

『まさに炎の衣をまとわされたような気分』
 日本の酷暑の暑さを、上田敏(びん)の名高い訳詩集『海潮音』で表現する朝日「天声人語」(2015年8月7日)。「〈「夏」の帝の『真昼時』は〉と歌い出され、〈耀く虚空、風絶えて、/炎のころも、纏ひたる地の熟睡の静心〉と。続いて〈山のあなたの空遠く……〉、文字と音が相まって真夏のかげろうが立ち上ってくるようだ。最高気温35度以上の猛暑日が続く。きのうの午後、東京駅の近く日なたを避けて日陰をたどっても、風が絶えればむせるようだ。書店の一角には、椅子が数脚置かれているが、満席だった。読みふける人、まどろむ人、色々である。中高年に無理は禁物と心の中で唱えつつ、炎天下を全力疾走する高校球児を思う。この高温はいつまで続くのか。炎の衣はそろそろ願い下げにしたいものだが。あす8日は立秋である。」
 日本の夏、高温多湿はご承知の通り、それなのになぜ、西欧風の建物で、西欧の洋服を着ているのか。エアコンをガンガン利かせてエネルギーを消費するのか。資源なく、子どもも少ないこの日本、これでいいのか。室内はエアコンが使えるが、野外はそうはいかない。いよいよ甲子園大会が始まった。なぜ、この暑い時に行うのか。勿論、夏休みだからだ。でも、日本のこの暑い夏になぜ、これほどの無理をせねばならないのか。みんなで我慢して行くのか。麻生風に考えれば、9月に会期が終わるから、それまで黙って我慢していろというところか。しかし、勝つまで我慢と言い、玉砕、大空襲、原爆、敗戦と、日本人は本当に炎の衣をまとわされた。