井深は早くから「大企業病」の弊害を社内に警告していた

(日経「春秋」2014/9/22付) 復興への意気込みは格別だった。戦後、「人間宣言」した昭和天皇は精力的に被災地や生産現場を訪問して、国民と共に歩む姿勢を示した。昭和37年に天皇が視察したのがソニーの工場だった。世界最小、最軽量のテレビの試作品を見た。当時社長の井深大は「身を乗り出すようにして小さなテレビの絵をご覧いただいた」(「私の履歴書」)と述懐している。同社は独創的な製品を次々に開発して世界企業に成長した。が、いま創業以来の危機にあえぐ。今期の赤字予想を500億円から2300億円に下方修正し無配に転落する。ソニーの前身は、新兵器を開発していた技術者が戦後、設立した。技術をたよりに日本再建につながる製品の開発に全力を注ごう。会社が大きくなり組織が膨らんで、その初心を忘れたのではないか。井深は早くから「大企業病」の弊害を社内に警告していた。まず初心に帰る。そこから復活への意気込みを見せてほしい。
(JN) 企業も生き物、生きているところの環境が変われば、それに対応しなければ滅びて行く。生きる場所を変えるのか、環境に対応した体に変えていくのか、環境を変えようとするのか。ソニーは、イケイケどんどんの拡大路線の中で会社の将来をどう考えていたのか、とにかく将来構想通りにはならなかった。さて、これからどうするのか。これは、日本の行方でもある。過去の遺産にしがみついていてもどうにもならない。日本もソニーも、過去の夢を追ってはならない。世界の中でのこの高齢化日本という構造をどう見て行くのか。世界が変わった中で、日本の変化をどのようにすべきであるか。方向を定めよ。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO77373630S4A920C1MM8000/